2月・3月期に見る大手小売業の業績

大手小売業各社の2月及び3月決算が発表されました。売上高(営業収益)からは前年度同様にセブン&アイHDとイオンの2社が他社を大きく引き離しています。前者が11兆4718億円、後者が9兆5536億円と3位のユニクロ等を展開するファーストリテイリング(2兆7666億円)の3~4倍、売上規模からは圧倒的な強さを見せつけました。しかし伸長率はファーストリテイリングが20.2%と驚異的な数値で上位2社を凌駕しています。

◆売価改定(値上げ)が増収の大きな要因

売上高3位のファーストリテイリングまでが売上高が2兆円を突破していますが、1兆円台になると企業数が増え、2兆円まで「あと一歩」の位置にあるのがドン・キホーテ等のパン・パシフィック・インターナショナルHD(1兆9368千億円=6月決算)です。5位がヤマダデンキ等のヤマダHDの1兆5920億円。同社は異業種・異業態企業の買収などにより商品幅の拡大、新業態の創造に邁進中ですが、中心の家電業界の不振・伸び悩みも影響、僅かながら減収に終わりました。ヤマダHDに次いでの1兆円突破の小売業は6位にウエルシアHD、7位にローソン、8位にマツキヨココカラ&カンパニーがあります。セブン&アイHDの-2.9%、ヤマダHDの-0.5%といった例外はあるものの上位各社は、折からの円高による売価改定(値上げ)により総じて増収決算となりました。

◆家電量販店の中で注目されるノジマ

そのような中で伸び悩みだった業種・業態が家電量販店です。画期的な新商品がなく買替え需要の中心の家電業界、さらにブライダルマーケットの縮小等の影響から全般的に苦しい業績を余儀なくされました。7兆億円強の市場規模(小売り換算)の巨大マーケットながら上位寡占化の中でトップのヤマダHDの減収がそのことを示しています。家電業界4位のエディオン、5位のケーズHDも僅かながら減収に追い込まれました。
このよう中で注目されるのがビックカメラ(8156億円=8月決算)とノジマ(7612千億円)の増収2社です。特に後者、ノジマの伸長率は20%以上に達しています。同社は神奈川県を中心に店舗を展開し、情報・通信分野に注力、同時に他の家電量販店が巨大・独立店舗を展開する中で中型・テナント出店が中心の戦略を採用しています。また店頭接客では「自社社員のみ(メーカー派遣社員は不在)」を強力にアピールしていることも功を奏しているようです。

◆「良好」「順調」に満足せず……

以上、売上高から見た大手小売業の直近の業績ですが、家電量販店を除くと概ね「良好」、そして家電量販店を含む上位100社が純利益ベースで黒字、まずは「順調」だった1年間と判断されます。その要因のひとつに前掲のように商品価格の改定を挙げることができます。問題は価格改定効果が一段落する今後(今期・来期)です。小売業の業績判断は現状の売上高でなされますが、今後の業績を左右するのは現在の来店客数・レジ客数・購入点数等の変化(増減)です。これらの数値が低下しているなら「イエロー信号」、その対策が必要なのです。