「地域店空白地区」が発生する可能性が高まる

戦後、新しい商品が次々登場、市場規模が急速に拡大してきた家電業界。電気店(=電気機械器具小売業)の店舗数も年々増加し、経済産業省「商業統計」によるとピーク時の1982年には71,283店舗にまで達しました(図Ⅰ-5-1)。その時の年間商品販売額は37千億円で、1店舗平均では年間約5,200万円(図Ⅰ-5-2)でした。

図Ⅰ-5-1(電気機械器具小売業)店舗数の推移

図Ⅰ-5-2(電気機械器具小売業)1店舗当り商品販売額
電気店数はこの年を境に、競争の激化による淘汰・転業、後継者難での廃業等で減少に転じ、2016年には34,038店舗(総務省「経済センサス」=以下同じ)とピーク時の約半分になっています。店舗数は減少したものの年間商品販売額は大きく伸長、81千億円に、そして1店舗当りでは23,800万円と約4.5倍に達しています。

図Ⅰ-5-1では1982年から減少を続けてきた店舗数は2012年を底に2016年には一転、増加に転じています。業界筋ではこの「異変」(店舗数の増加)はあり得ないということになっています。メーカーの取引き地域店も減少を脱してはいません。実態との乖離が生じた理由は調査実施官庁の変更(経産省「商業統計」から総務省「経済センサス」)と調査方法の一部改訂に伴って発生したものと見るのが妥当なようです。2016年以降も電気店の減少は続き、現時点で地域店が約22,000~23,000店舗、量販店(総合家電店)約2,500店舗(同)、それにPC専門量販店店舗等を加えると25,000~26,000店舗と推定(C&A)されます。

地図情報システム(ソフト)jSTATを使用して地域店の商圏・顧客分析を行うと都市・住宅地に立地している地域店の分析例では徒歩20分圏でのシェアが非常に高く、かつ40分圏に大半の顧客が分布していることが明らかになります。以前から「(日常)生活圏」という概念があり、これは(電気店に限らず)中小小売店の商圏はこの「生活圏」、公立中学校の校区にほぼ一致するとされてきました。

公立中学校は全国で約10,000校。地域店数が単純に20,000店とすると地区により偏重はあるものの「生活圏」当り平均2.店ということになります。今後、廃業店や実質廃業店(高齢化で頼まれ業務のみの地域店)が増加すると「地域店手薄地区」「地域店空白地区」が増える可能性もあります。別の表現をすると若い後継者が経営する地域店には拡大のチャンス(「第二次成長期」)が到来したことを意味します。

 

次回に続く